INDEX(非常口)

トギってなに?

 「ぷはー。」
 部屋に着くなり、ベッドに倒れ、脱力するエステル。
 「おい、だらしねぇな、しゃんとしろ。」
 「あぁうー、わーってるわよぅ。」
 「ぜってー、わかってねぇ。」
 (ヨシュアの苦労がわかるぜ。)
 「なーんか、しつれーな電波を感じるんですケド。」
 大仰に溜息をつく。苦笑する姫さんとティータは、荷物を片付け、装備を外す。
 「え、えっと、そこがお姉ちゃんのいいトコ(?)ですし・・・。」
  ―――最早、何も言わん。
 流石にガキの扱いに慣れてるのか、クローゼがエステルの世話をする。
 (・・・泣くぞ、王国中が・・・。英雄の娘が、次期女王に世話をさせてるなんざ・・・。)

 「とりあえず、ひとっ風呂浴びてくる。お前らもちゃんと自己管理しとけよ。」
 一人以外は心配ねぇんだが・・・。はぁ、何で俺が保護者代わりなんだよ。
 ゆっくり湯船に浸かり、疲れを落とすというより時間を潰す。
 男の目のない時間を作ってやらねーとな。・・・一人以外。アイツ、男心は解ってんのにな。

 「わはー、おいしー。」
  ―――ぜってー喰いすぎだ、駄目だ、コイツ。
 何度目かのお替りを見ていて、箸を置く。気付く姫さん、今日は大変でしたし、と。
  ―――あんた、いい女王になるよ。
 「でもでも、ほんとに、おいしーですよ?」
 「だからって、限界まで喰う馬鹿がドコに・・・。」
 「うー、満腹、はー、しあわせねー。ちょっと苦しーけど。」
  ―――いたよ、目の前、同じ職場に・・・。
 「この、トロッと舌の上で蕩ける感触、素材を生かしつつ、深みを感じさせる味付け、未知の 味覚を知ってしまったわ。」
  ―――ばかだ、バカがいる。・・・真馬鹿。
 「あ、ねぇねぇ、クローゼ。今夜さ・・・。」
 「は、はい・・・。」
 「・・・あのな、朝起きられねークセに夜更かしなんかすんな。」
 「ティータだって、夜、本読んでんじゃない。」
 「オメーのは、くっちゃべってるだけだろ。」
 「ふふん、コミュニケーションってヤツ?」
 「・・・いーから、寝ろ。」
 「へー、なーんか、ティータにだけは甘いわよねー。」
 「・・・毎朝、お前が起きるまで待たされんのが嫌なだけだ。」
 テーブルを立ち、
 「先に寝る、程々にしとけよ。」
  ―――ムリだろーが。

 こんな時は寝ちまうに限る。ベッドに横たわり、目を閉じた。


 「あぅぅ。」
 結局、エステルに付き合わされて、夜半過ぎ、ベッドに持ち込んだジュースとお菓子。
 気の置けない間柄。ざっくばらんな話題の数々。
 「飲みすぎちゃったかなぁ。」
 渇く喉を潤すために、幾杯開けたか無数の瓶。
 開かない瞼の隙間から、光を頼りにお手洗い。
 「はー。」
 戻った部屋は、何気に寒く、虚ろな思考が温もりを求める。
 「へへー、お姉ちゃんー。」
 「・・・んー。」
 潜り込む布団。人肌の安らぎ。安眠の祠。
 「・・・くー。」
 夜明けまでには、まだ遠く。ひとときの別世界。

  ・・・あぁ、夢、か。
 今のような、昔のような。歩いても進まないのに、場面は急に切り替わる。
  ・・・へっ。
 甘い香り、果実が枝に生い茂り。大人の目を盗み、拝借する。
 口に広がる僅かな酸味と仄かな甘味。流石、ラヴェンヌ。
 もう一つと手を伸ばす先に、突然足場の崩れる気配。
  あ、と気付いて、抱え込む。誰だったか、あぁ、依頼人がいたんだ。
  あれ、いや、落ちたのは俺か。じゃ、助けられたのか。
 柔らかな温もり、長い毛を指で漉く。
  ・・・はは、そーいや、猫が居たな。飼ってるわけでもねーのに人懐こくて。
  そーだ、寒いときには毛布に潜り込むんだよな。
 撫でるとせがむ様に、身をこすり付け、ゴロゴロと喉を鳴らす。
  ・・・へーわってやつか。こんなのも悪くねーか。
  ? そうか? 
 体が宙に浮き上がり、渋る瞼の先に眩しい光が差し込んでゆく。

 「・・・んあ。」
  夢、そーだ、夢見てたんだよな。
 一息ついて、身を起こ、・・・んあ。
 ずれた布団。寒さにしがみ付く猫、・・・だった物体。
 「あ、あの・・・。」
 ぎくりとした視線の先、申し訳なさそな姫と、頬を染め視線を逸らすエステル。
 「お二人のことは、なんとなく気付いていましたから。」

 「い、いや、ちが・・・。」

 「あ、うん、ほら、あたしたちも、どうこう言うつもりは無いから。」
 「ティータってば可愛いし、アガットの気持ちもわかるっていうか・・・。」
 「・・・ただ、ちょっと、早いかなーって、ビックリしただけだから。」
 「アガットさんは誠実な方ですし、婦女子を徒に弄ぶ事の無い殿方だと信じてますから。」
 「・・・・・・」

 言い訳の通用しない状況になぜ陥ったのか。デジャヴな落下感に見舞われながら。
 「ねぇ、クローゼ、トギってゆーんだっけ?こーゆーの。」
 「え、えーと、そ、そーですね。」
 言葉の意味を再確認。



JJJさんより、同盟参加のときに頂いてしまいましたと言いますか、一緒に書かれていたので強奪してまいりました。
ティータがかわいくて、最後のアガットさんの台詞にどっきりです。4年後だと、ティータもしっかり乙女なんですよね。
JJJさんどうもありがとうございました。
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