INDEX(非常口)
対 怪盗ブルブラン。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜。」
声にならない悲鳴が轟く。
当たり前のように存在していた、大事なものを失ってしまった叫び。
「ア、アガットさんっ!」
部屋に飛び込むなり、その姿を見つけて抱き付くティータ。
「うわ、なにしやがる。」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜。」
瞳に涙を湛えたまま、一枚のカードを差し出す。
「 小さき可憐なバラのつぼみと、守護せし棘たる戦士へ。
美しき花を咲かせんと欲するならば、
獰猛なる、歴史の証人を取り戻したくば、
我が試練を 乗り越えるがいい。 」
・・・・・・。
―――出た。・・・変態仮面が。
うんざりした表情で、カードを見る。
「待て、んだよ、この獰猛だの、証人だのゆーのは。何盗られたんだ?」
「・・・・・・。」
「あ?」
「誕生日にもらった、くまさんっ!」
―――阿呆か・・・。
「〜〜〜。お願いしますっ! 一緒に捜して下さいっ!!!」
・・・ダリィ。
溜息しか出やしねぇ。ったく。
「あぁ、わーった、わーった。」
「っ! ちゃんと捜して下さいっ!」
ぼりぼり頭を掻いてる脇で、キャンキャン啼きやがる。
「わかったってーの。代わりのモンやるから。」
「 ! そんな、そんなのヤですっ!!!」
ひ、ひどい、うーーーーっ!!!
睨む私の前に近付いて、それで・・・。
視界に広がる赤。と緑。蒼の瞳が迫ってきて。
温かな。柔らかな。ぷにゅって。
アガットさん、あんまり髭無いよね。肌ツルツル。
あ、頬の傷、いつか聞こうと思ってたんだ。
結構、顎の線、しゃーぷ。
・・・。ぷにゅ?
ぷにゅっ、てっっっ!!!!
「・・・・・・。」
「――――――!」
「 ! 」
ふ、ふぁ、何か言ってる。目が動かない。
手、手はどこっ! あ、足がっ。
固まる私にもう一度近付いて。
狭まる距離に、思わず反射で目を閉じてしまって。
背中に回される右の腕。爪先からは地面が遠のいて。
いつもと違う、肩越しに見える後ろの景色。
右の頬に、アガットさんの右の頬。
「あんま、世話焼かすなよ。」
いつもより、小さく近く、響く低音。
「ほぅ、まさか、こんな結末とはね。」
「ふむ、私の試練を乗り越える美を見られると思っていたが・・・。」
「いささか、趣は異なるとはいえ、・・・ふふふ。」
「しかし、《怪盗紳士》としては、屈辱の極み。」
後ろ向きに遠のく景色のなか、火照った頬に流れる風。
スタスタ、変わらぬ歩のリズムで進んでく。
―――なんで? なんでいつもと変わんないの、アガットさん。
い、いまごろ、ドキドキしてきたってゆーのにっ。
(・・・もう、ずるいなぁ、・・・ほんとに、もう。・・・)
JJJさんより、同盟参加のときに頂いてしまいましたと言いますか、一緒に書かれていたので強奪してまいりました。
ティータがかわいくて、最後のアガットさんの台詞にどっきりです。4年後だと、ティータもしっかり乙女なんですよね。
JJJさんどうもありがとうございました。
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